「正解を出す授業」ではなく、「考え方を獲得する授業」を。
前時に「すべての条件がばらばらなデータ」を意図的に残し、そのモヤモヤを手がかりに、
「比べられない」という気づきから
「条件をそろえる」という考え方を、
子ども自身の言葉で生み出すことを大切にした。
教師は結論を急がず、問い返しと沈黙の時間によって、子どもが自分の言葉を探す過程そのものを保障する。
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①
子どもが「比べられない」と自分から気づく瞬間 導入:前時のA・B・Cのデータを前に、「長さ?」「重さ?」という単発の予想から、「どれも違うから決められない」へと言葉が変わるところ。
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②
問い返しのあとに生まれる沈黙(3〜5秒) 展開①:「なんで、他の条件をそろえないといけないんだろう?」の問い返しのあと、教室に流れる静かな時間。子どもが自分の言葉を探している「考えている時間」そのものを見てほしい。
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③
子どもの言葉の変化 「長さ?」「重さ?」→「決められない」→「比べられない」→「1つだけ変える必要がある」という段階的な変化が、発言と板書に現れる過程。
公開授業は第3時。前後の第2時・第4時とセットで設計しています。タブで切り替えて確認できます。
班ごとに異なる条件でふりこを調べ、班によって結果が違うことから「どの条件が原因か分からない」という問題意識(モヤモヤ)をもつことができる。
5分
思い出す
前時の3つの条件(長さ・おもり・ふれはば)を黒板に掲示して確認。
15分
実験する
班ごとに異なる条件でふりこの1往復の時間を測定。10往復×3回 → 平均 ÷ 10。
1・2班 → A(長さ40cm・おもり1個・ふれはば30°)
3・5・7班 → B(20cm・2個・15°)
4・6・8班 → C(60cm・1個・45°)
10分
共有する
全班の結果をロイロノートで提出 → 黒板で比較(A≈1.4秒 / B≈1.0秒 / C≈1.7秒)。
発問 班によってずいぶん違うね。どの条件が関係してそう?
10分
モヤモヤする
問い返し 「これが原因だ」って、自信をもって言える?
子どもの予想(「長さ?」「重さ?」「ふれはば?」)を短冊にして黒板に残す。答えは出さず、次時へ持ち越す。
仕込み 「どうしたらはっきり分かるかな?」を投げかけて終える。
5分
次時へ
「今日モヤモヤしたこと」「次に考えたいこと」をふり返りシートに記入して提出。
結果カード(A・B・C)と子どもの予想短冊は黒板に残したまま終了。第3時の導入でそのまま再提示し、「あれ、全部違うじゃん」「比べられない」という気づきを子ども自身の言葉で立ち上げる展開につなぐ。
ふりこの1往復する時間を正しく比べるためには、調べる条件を1つにし、それ以外の条件をそろえる必要があることに気づくことができる。(思考・判断・表現)
10分
揺さぶる
前時のデータA・B・Cを再提示。
問い返し①-a ほんとにそれだけが原因って言える?
問い返し①-b もし違ったら、どこが怪しい?
→ 「あれ、全部違うじゃん」「比べられない!」
10分
発見する
発問 じゃあ、どうしたらどれが原因か分かりそう?
→ 子どもの言葉で板書:「変える条件→1つ/そろえる条件→それ以外」
問い返し②(核) なんで、他の条件をそろえないといけないんだろう?
※ここで3〜5秒の沈黙を意図的にとる。「考えている時間」を保障する。
→ 「一緒に変えたら、どれのせいか分からんくなるから……」
15分
計画する
ふれはばを変える実験計画を立てる(変える:ふれはば30°と15° / そろえる:長さ40cm・おもり1個)。
確認の問い返し もし長さも一緒に変えちゃったら、正しく比べられる?
→ 「また比べられなくなる!」
5分
言葉にする
子どもの言葉を板書 → 教師が整理する順で進める。
「調べる条件だけを変えて、他は同じにしないと、何が原因か分からなくなる」
→ これを『条件をそろえる』と言います。
5分
わがとも
【わ】条件をそろえると比べられる 【が】自分の考え 【と】友達の「なるほど」 【も】他の場面でも使えそうか
「比べられない!」と子どもが自ら気づく瞬間(導入)
A・B・Cのデータを前に、子どもが自分の言葉で「言い切れない」と気づく場面。
「1つだけ変えればいい」と子どもが言う瞬間(展開①)
解決策が教師からではなく、子どもの言葉で板書化されていく過程。
問い返しで考えが深まる対話(展開①後半)
「なんでそろえないといけないの?」という問い返しで、意味が子ども自身の言葉で立ち上がる場面。
子どもの「言葉の変化」が見える授業
「長さ?」→「どれも違うから決められない」→「比べられない」→「1つだけ変える必要がある」へと段階的に変化していく過程。
沈黙のあとに出てくる「子どもの一言」
問い返し②の後、3〜5秒の静かな時間が流れる。この沈黙は子どもが自分の言葉を探している時間。そのあとに出てくる一言こそがこの授業の価値をつくる。
上段:問い・予想・気づき
下段:解決・条件整理・実験計画
条件をそろえてふれはばだけを変える実験を行い、ふりこが1往復する時間はふれはばによって変わらないことを確かめる。「条件をそろえたから正しく比べられた」という実感をもつことができる。
5分
計画を確認
前時(第3時)の実験計画を確認:変える条件→ふれはば(30°と15°)、そろえる条件→長さ40cm・おもり1個。
20分
確かめる
班ごとにふれはば30°と15°で実験。10往復×3回 → 合計÷3 → ÷10 → 1往復の平均タイム。結果をロイロノートに入力。
5分
比べる
全班の結果を黒板で共有 → どの班もほぼ同じ時間。
問い返し 今日はなんで昨日より自信をもって言えそう?前回と今日、何が違う?
→ 「今日はふれはばだけを変えて、他をそろえたから!」
10分
つながる
まとめは2文構成で子どもの言葉から引き出す。
① 同じふりこなら、ふれはばが変わっても1往復する時間はほとんど変わらない。
② それは、ふれはばだけを変えて、ほかの条件をそろえて比べたから言える。
5分
わがとも
【わ】ふれはばは時間に関係しない 【が】自分の予想との比較 【と】友達の考察 【も】次は何を調べたいか(長さ?重さ?)
本時は第3時で発見した「条件をそろえる」という考え方を、実際の実験で確かめる時間。「条件をそろえたから比べられた」という実感が、条件制御を「作業」ではなく「意味のある行為」として定着させる。第5時以降は同じ考え方で長さ・おもりの重さの関係を調べ、ふりこの法則の発見へとつなぐ。
「条件をそろえる」という考え方は、教えたものではなく、
子どもたちの中から生まれたものである。
実際の授業では、子どもたちが前時のデータをもとに根拠を考え、「原因が決められない」ことに気づく姿が見られた。そこから、「どうしたら比べられるか」を考える中で、「条件をそろえる」「1つだけ変える」といった考えが、教師に教えられるのではなく、子ども自身の言葉として立ち上がっていった。
また、第4時での予想の場面では、身振り手振りやブランコ、勢いといった生活経験を使いながら、「伝わるように伝える」姿が多く見られた。
第2時でモヤモヤを残し、第3時で意味に気づき、第4時で実験を通して確かめるという3時間の流れの中で、「条件をそろえる」という考え方を子どもが必要感をもって獲得していく単元構成の価値を改めて感じた。
そしてこの「モヤモヤを残す → 意味に気づく → 実験で確かめる」という3時間の構造は、今回の単元にとどまらず、他の単元でも子どもが考え方を獲得していくための、ひとつの授業設計の型として活かしていけると感じている。
第2時〜第4時の板書を時系列で並べ、子どもの思考の変化を可視化した。公開授業の中心は第3時で、第2時は「モヤモヤを残す」導入、第4時は「実験で確かめる」展開として、その前後を支える役割をもつ。3時間の流れの中で、子どもが「条件をそろえる」という考え方を獲得していく過程をそのまま見ていただきたい。
第2時から第4時にかけての思考の変化が、板書に表れています。